「世界ふしぎ発見」のアレクサンドロス


映画「アレキサンダー」公開が近いため、「世界ふしぎ発見」においてアレクサンドロス大王の特集が取り上げ られていました。最近の「世界ふしぎ発見」は映画や小説に乗っかった企画が多いのですが、少々掘り下げ方が 昔と比べると甘くなっているような気がします(問題の数も減ってしまいましたし)。今回の特集も映画が なければおそらく企画されなかったでしょうが、果たしてどのような企画になったのか。


番組の序盤でヴェルギナ王墓が登場しましたが、ヴェルギナ王墓はそっくりそのまま博物館になっているとのこと。遺跡を そのまま博物館として展示するという手法は何となく兵馬俑みたいですね。今回の番組ではフィリッポス2世の墓を 未盗掘としていますが、未盗掘墓の埋葬者の特定は現在も議論は錯綜しており、フィリッポス3世説もあります。ヴェルギナの 財宝をテレビで見たのははじめてなのですが(世界遺産でもやっていないはず)、非常に豊かな副葬品が埋まっていたようです。 フィリッポス時代の話は軽く触れただけで、すぐにアレクサンドロスの話に移ってしまいましたが、ヴェルギナ王墓が見られたので よしとしましょう。まあ、フィリッポスの勢力範囲でスパルタまで入ってしまったのはご愛敬ということで(スパルタはコリントス 同盟に加盟せず、東征中にアギスの蜂起という反マケドニア闘争を起こしています)。

マケドニアの民族衣装に付いているペリケファリアに関する話ははじめて聞きました。アレクサンドロスがギリシア 本土のポリスの反乱を討ちに行っている間に異民族に攻められたある町で女性たちが勇敢に抵抗したという話で、それ をしった大王が兜につける飾り(ペリケファリア)をつけることを許したという話でしたが、色々な形で大王に関する 記憶が残っていたようですが、どうなんだろう。これに関しては私の手元にある物では確認はとれませんでしたが、 アレクサンドロスにまつわる様々な伝説の一つとして処理しても良いかもしれません。そして、その後クイズに入り、 古代ギリシア人は化石を見て神話に出てくる巨人だと考えたと言うことが問題になっていました(なぜか野々村真がおまけ で正解に・・・)。

そしていよいよ東方遠征に話が入ります。イスタンブルの「アレクサンドロスの石棺」が登場し、さらにエフェソス のアルテミスの神殿のはなしも取り上げられていました(伝説ではアレクサンドロスが生まれたときに神殿が焼けて しまったといわれています)。マケドニア軍の武器も番組で取り上げられ、サリッサは当然登場しました。密集陣形の 復元は人間を使うのではなく、ミニチュア(ひょっとしてレゴ?)で表現していました。そして、ガウガメラの戦いの 場面、バビロン入城へと至り、そこでは映画のワンシーンも出てきました。

アレクサンドロスがなぜインドにまで遠征したのかについて、神や英雄を超えようとしてインドにまで遠征したという 説明で済ませていましたが、確かに彼の行動について書いた資料などを見ると、ヘラクレスやディオニュソス、アキレウス と張り合おうとしたということは書かれています。しかし本当にそれだけなのかは簡単には答えは出ないでしょう(それが でるようなら、多数の研究所や論文が残されることはありませんし)。クイズでは、アレクサンドロスのコインの肖像に つけられているゼウス・アモンを象徴する角が問題になっていました。イスラム世界ではデュルカルナインという呼び名を もつアレクサンドロスですが、アレクサンドロスのコインがギリシア、オリエントで多数流通する中で角を持つ物という 伝承が残ったのではないかと思われます(ここでは半分の人が正解でした)。

トルコにおいて、ラクダ相撲を取り上げていましたが、ラクダ相撲から東西文化の融合に話を持って行くというかなり アクロバティックな場面転換ののち、アレクサンドロスによる都市建設やヘレニズムへと話が進んでいきました。ここ はかなり強引なのではないかと思います。その後、モザイク画が話題になっていましたが、あれも東西文明の交流に よって生まれたとのことですが、はたして。アレクサンドロスの夢として、アラビア遠征や西への遠征のこともとりあげ つつ、最後のクイズに入りました。砂漠で道に迷ったときのアレクサンドロスを救った生き物が問題となりました。正解 はカラスでしたが、蛇が先導したという説もあります。ただし蛇の方はプトレマイオスのみが伝え、ほかの史料ではカラス が先導したと伝えていますので、蛇の方はプトレマイオスがエジプトの宗教的伝統などを勘案して改変したというのが妥当 なところと考えられているようです。ただ、どちらもかなり身近な動物なので真相は不明ですが。

全体としては、少々強引な展開もありましたが、思ったよりもまともな作りだったように思います。映画や小説をベース にすると、そちらの解釈に引っ張られてしまうことが多い「世界ふしぎ発見」ですが、今回は比較的アレクサンドロスに ついては一般的なイメージで話が進んでいるようでした。普段もこれくらいのレヴェルでまとめてくれるのであれば、 まだ「世界ふしぎ発見」も見る価値はあるかなと思いますが、会によって番組の質が大きく変動するのでどうなることやら。


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