大関ヶ原展を見る


2015年は徳川家康没後400年ということで、徳川家に関係する企画が色々と持ち上がっているようです。博物館や美術館に おける展覧会でも徳川や江戸に関係する企画はあるようで、江戸東京博物館では「大関ヶ原展」という関ヶ原の合戦に焦点 をあてた展覧会が開かれています。小説、映画やドラマ、漫画やゲーム、様々な媒体で戦国時代が扱われており、日本では 何だかんだと行っても戦国時代の人気は高いです。そのなかでも、有名どころが一堂に会する関ヶ原の合戦をあつかうとも なれば、かなり多くの人達が見に来ることは確実ですし、実際に非常に混雑していました。

展覧会の構成としては、まず最初に関ヶ原合戦図屏風が複数並べられており、この合戦がどのように描かれているのか というイメージを掴んでから、秀吉没後、関ヶ原の合戦に到るまでの過程、関ヶ原の合戦に関係した武将達、さらには 実際の古戦場から見つかったモノの展示、そして戦後処理にいたるまでをまとめているという形です。なお、展示品は 前半と後半での入れ替えがあるほか、期間限定で展示されるものもいくつかあるようです。

まず、最初に出てくる関ヶ原合戦図屏風ですが、描かれた時代によって色々なパターンがあるようです。それぞれに強調する 主題に違いがあり、井伊直政と赤備えの活躍が目立つもの、島津義弘の撤退戦がめだつものがあったりします。また絵の描き 方も随分違いがあり、色使いとか線、人物の描き方などが屏風によってずいぶんと違いがありました。色々な屏風が書き残さ れる背景について考えてみても面白いのかなと思います。

その他、関ヶ原合戦絵巻というモノも展示されていました。これについても様々な絵巻があり、上下2巻組みで合戦が始まる 前の話し合いから伏見城攻め、岐阜や上田城等々での戦い、関ヶ原の合戦、争いの終結までを時系列にまとめた物もあれば、 各大名家には特定の場面を描いた絵巻が個別に伝わっていたりもします。また、他の絵巻には描かれていない場面が描かれた ものもあるなど、この絵巻きの成立過程は今後の研究で色々分かるようになるのではないかと思います。

その他の展示物としては、様々な書状が展示されていました。大名の間でやりとりされた書状には、その書状がやりとりされた 文脈が分からないとかなり分かりづらいものもあります。あまりはっきり書かない方が良いこと、別にそこに書かなくても何を 書いているのか分かるから書かないということもあるのでしょう。様々な指令、労をねぎらう手紙、功績をたたえる手紙から、 当時の大名達の間で合戦前に密かにかわされたやりとりなどなど、関ヶ原の合戦という出来事の背後にあった色々なことを知る 手がかりはこういった手紙だと言うことが分かります。

そして、なにより、当時の武士達の身にまとっていた鎧や衣服、彼らが持っていた刀や槍の現物が展示されていました。 どこかで写真では見たことがあったり、名前は聞いたことがあったものがありますが、それを実際に見られる機会はなかなか なく、これだけ色々な物を見られる機会はあまりないと思います。なお色々と入れ替えがありそうですし、東京以外の 所での展覧会で見られるんじゃないかと思うものも図録には載っていたりします。

最後の所では家康に関する展示もいくつかあり、家康の持っていた色々な道具や肖像がが展示されていました。ここでは、 普段ではあまり見かけない家康の肖像がもあり、帽子のようなものをかぶった家康の姿が描かれています。家康の肖像と いうと、三方ヶ原の戦い直後に描かせたというしかみ像、衣冠束帯姿ででっぷりとした家康の姿といったものはよく見られ ますが、そうではない家康像というのは新鮮な感じがしました。

全体として、集められている物は興味深い物が多く、さらに展示では書状に訳文もつけられている(図録にはついていない) ため、その場で読んで堂言うことなのかを考えることもできる展示になっています。どこかで名前を聞いたことがある、見た ことがある人やものが並んでいるため、見に来た人達もそれを見ながら色々と語ったり、色々と感想を述べている場面にも 良く遭遇しました。一方、書状のところなどではじっくりと読もうとして立ち止まる人が多く、それで展示を見るのに時間が かかったという所もあると思います。そのため予想外に時間を食ったのは確かですが、見応えのある展覧会であったことは 間違いないです。入れ替えが一部展示物にあるので、又見に行こうかと思います。


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