「第九軍団のワシ」を見に行く。


2012年3月30日、ユーロスペースにて上映中の(というか、ユーロスペースでしかやってない…)、「第九軍団のワシ」を見に行ってきまし た。 原作は以前読んだことがあり、負傷し除隊を余儀なくされた失意のマーカスがエスカとであい、そして第9軍団の鷲の軍旗を探しにいくという話 であることは知っていました。ただ、原作と比べながら見ちゃいけないとは思いながらも、映画の方はかなり原作とは雰囲気が変わっているよう な気がしました。

まず、マーカスとエスカの関係が単なる主人と奴隷から変わっていく過程を原作ではかなり書き込んでいるのですが、映画はその辺は結構すっ飛 ばしてワシ探索の旅に向かっています。その分、ワシ探索の旅でハドリアヌスの長城より北に行ったときに、果たしてエスカがこのままマーカス に従うんだろうか、裏切るんじゃないだろうかと、ちょっとはらはらするような感じは出ています。エスカの父親が第九軍団と戦って死んだと言う ことは原作でも触れられていますが、第九軍団がどうなったのかを知っているのに言わなかったということでちょっとした諍いが生じたりします し、 アザラシ族と遭遇したときにそれまでとは立場がまるで逆転したかのような状況が生じるのですが、こうなることを知っていてわざとやったのかと 思ってしまう場面もありました(まあ、苦肉の計みたいなものだったわけですが)。

また、原作は失意のマーカスがエスカなど様々な人々との出会いや北方への旅を通じて成長し、新たな自分を見いだしていくというマーカスの成長 物語という所があるのですが、映画はそう言った要素は薄いです。その代わり、原作と比べると戦闘シーンが格段に増やされています。冒頭では まだ軍人をしていたマーカスがブリトン人と戦う場面があるのですが、ローマの陣営にブリトン人が夜襲をかけて戦闘になるところ、さらに亀甲 隊形を組みブリトン人の集団に突っ込んでいく所など、見せ場は多いです。それだけではなく、終盤の展開を原作とは全く違う形にかえており、 マーカスやエスカなどの人々とアザラシ族の戦闘がクライマックスとなっています。明らかに原作とは違う展開なのですが、これはこれで有りかな という気もしました。グアーンの存在感がこれによって原作とは違う形で増していたような気がします。

一方、これはちょっと問題かなあと思ったところもありました。まず、ブリトン人サイドの描写で少々残酷な場面が多く見られたり、ブリトン人 (とくにアザラシ族)の描き方が未開世界の野蛮人そのものという描き方になってしまっていたところ、そしてブリトン人たちの人物造形も少々薄 っぺらくなっていたところは残念でした。アザラシ族の若者やアザラシ族の族長が特に悪い方向にキャラクターが改変されてしまい、単なる暴力的 な未開人という描き方になってしまっていました。原作ではどちらもそれなりに魅力的(特に族長の方)なのにもったいないです。

あとは、結末部分もなんだかなあと。原作では、マーカスの目的は半分は達成され、半分は失敗におわりますし、マーカス自身も新しい生き方を 見いだしていくという展開なのですが、映画の終わり方はちょっと違うかなとおもいます。 とはいえ、全体としてはまずまず面白く見ることは できました。上映館数が少ないですし、公開期間も短そうではありますが、見ておいても良いかなと思います。


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