古代ギリシャ展を見る


2011年7月5日より、東京の国立西洋美術館にて、「古代ギリシャ展 The Body 究極の身体 完全なる美」という展覧会が始まっています。 大英博物館に所蔵されている古代ギリシアの彫刻や陶器などからなる展示ですが、目玉となっているのは「ディスコボロス(円盤投げ)」 の像です。ちなみにポスターでも使われている上、科学博物館の恐竜展のポスターと連携し、飛んでくる円盤を恐竜がかがんでよけている ような構図になっていたりもします。

私自身は、7月5日と6日の2日続けて見に行ってしまいましたが、平日の午後にいくと比較的空いています。東京国立博物館の阿修羅展の 時はとんでもない行列ができており、メインの阿修羅像を見るのが非常に大変だった記憶がありますし、他の展覧会でもまともに見ること ができないくらい混んでいました。それと比べると、まだ始まって日も浅いうえ、平日の午後と言うこともあって、かなりゆったりと見る ことができました。以下、見てきた展示について思い出せる範囲内で書きながら、感想をまとめてみようと思います。

最初は神や英雄、人外のモノたちを扱った彫像や壺が展示されていました。最初にゼウスの像があり、その後はヘファイストスや ディオニュソス、さらにヘラクレスの功業をあつかった壺絵や、スフィンクス、サテュロス、ケンタウロスなどなど、様々なものがみられます。 今回見た物の中では、端正な顔つきのスフィンクスは何とも不思議な感じがしますね。動物の体にぽこっと人間の顔がのっている図像って、 何を元にして、そういう姿にしようと考えたのか、結構気になります。ボードマンの本でもまた読み直した方がよいかもしれません。

次に、男女の身体表現をメインとしたコーナーに移りましたが、なんというか、ボディビル雑誌とかフィットネス雑誌等々、体を人工的 に作り上げていくことに楽しみを覚える(というか命賭けてるんじゃないか、彼らは)人達にとっては理想的な人体表現になっているというか、 こんなにぼこぼこ筋肉って付くものなのか…。自然な体、という感じではないなあというか、非常に人工的な、作られた体ではあっても、これを 「理想の身体」だとは個人的には思えず、そのまま通り過ぎていきました。あとは、人物表現も一定のパターンってあったのかなと言う気がします ね。ソフォクレスと哲学者の顔つきがそっくりなのは、そういうカテゴリーに分類されてるんでしょうか。

その後、古代オリンピックとそれにまつわる芸術表現のコーナーにうつり、オリンピックで行われていた色々な競技について、それを表現した 壺絵などが並べられているのを見物。長距離走のフォームが、なんとなく現代の普通の走り方とは違う感じがします。左手と左足、右手と右足 がそれぞれ同時に動いているとでも言いましょうか、歌舞伎の所作にこんなかんじで手足が出る動き方があったけれど、ああいう感じだろうか とか、妄想を働かせつつ見てきました。なお、漫画「ヒストリエ」の読者およびファンの皆様は、オリンピアの模型の所の説明はよく読んでみて 欲しいなあと思います。こんな所にフィリッポス2世が関係あるのかと、人によっては驚くかもしれません(知ってる人は、ふーん、そんなもの かと思うかもしれませんが)。

そして、古代ギリシア人の生と死、感情などに関わる展示が最後にまとめて並べられていますが、コリントス式の兜とか胸当てとか、 そういうものをみて喜んでいたのは、会場内でも恐らく自分くらいだったのではないかと(すみませんね、変な趣味の持ち主で)。 あと、おもちゃを取り合い激しく争っている子どもの像がありましたが、おもちゃを取り合う子供の喧嘩って、こう言う表情になるよなあと、 妙に納得がいくものがありました。このコーナーの像は、結構感情表現豊か(と言ってしまうと言い過ぎか?)な像がいろいろあり、意外と 面白かったです

本家の大英博物館に行けば当然これの数十倍、数百倍の収蔵品があり、もっと色々な物が見られるのですが、これくらいの数でもじっくり見ると なかなか充実した時間を過ごすことができます。展示物が小品ばかりとかあれこれ文句を言う方もいますが、確かに大作というものは目玉の 円盤投げくらいかもしれません。でも、壺絵とかみてると、解説には何も書いていないけれど、これって何だろうとか考えてみたり、小さい像 でも、なんでこんな形・姿勢をしているのかということについて想像してみると、結構楽しめると思います。光り物がそんなにきていないのは 別に気にはならなかったです。そもそもThe Bodyという展覧会でむやみやたらと光り物を並べる必要もないでしょうし。


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