ミレイ展をみる


9月23日、渋谷のBunkamuraで開催中の「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」を見てきました。渋谷で展覧会を見るのは一体いつ以来だろう とおもいつつ、開場して間もない時間にいってきました。そうしたところ、休日だったせいかかなり混雑していましたが、ひどいときの国立博 物館の特別展に比べればまだ余裕はありました。

19世紀英国美術を代表する画家ミレイ(1829〜96)の回顧展で、「オフィーリア」という絵で有名な画家ミレイの作品が数多く展示されています。 「オフィーリア」と言われてもわからない人もいるかもしれませんが、シェイクスピアの悲劇「ハムレット」に登場するオフィーリアが溺死する 場面を描いた絵画で、夏目漱石「草枕」でもこの絵についての言及があるとか。また、「銃・病原菌・鉄」(ジャレット・ダイアモンド著)の 表紙となっている「ペルーのインカ国王をとらえるピサロ」(これがロイヤルアカデミー初出品だとか)も若かりし頃のミレイが描いた絵です。 そんなわけで、誰の絵とも知らずに意外なところで結構見ている可能性があるミレイの作品ですが、初期の頃から晩年の頃まで、作風を度々変え ていった様子がわかるような展示になっています。

展示はミレイが若い頃の絵画から順番に(一番最初に来るのはなんと10歳くらいの頃に描かれた物!)、ラファエロ前派の一員として描いたもの、 さらに新たな方向性を目指し唯美主義」「ファンシー・ピクチャー」「スコットランドの風景画」と年月が経つにつれて方向性を色々と変えて いったという形の展示になっています。今回の展覧会の目玉「オフィーリア」はミレイの画家生活の前半に描かれた物で、彼はこれ以降も色々な 絵画を描き残し、ロイヤルアカデミーのトップにまで上り詰めるという具合に、生前は不遇という近代の画家のイメージとはまるっきり異なる 成功者としての生涯を送ったのですが、1世紀以上全貌を伝える個展は開かれず、ミレイ没後100周年の時も特に話題になることもないといった 具合に、現代ではそれ程注目はされていないような感じがします。

しかし、今回の展覧会をみていると、確かに「オフィーリア」はメインになるだけのことはあるなあと思いましたが、それ以外にもなかなか魅力 的な絵が数多くみられました。火事場で子供を救助する場面はまるで実際に火の側にいるような感じを与えますし、10歳の時に描いたギリシア 戦士の彫刻を描いた絵は、「栴檀は双葉より芳し」という言葉がぴったりと来る絵画でした。また、まるでビフォー・アフターのような「初めて の説教」と「二度目の説教」(はじめは姿勢を正してきちんと聴いているけれど、次の絵では眠りこけている)とか、面白い絵も結構ありました。 あとはスコットランドの風景画が最後の方にあり、これもなかなかよかったです。


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