「トプカプ宮殿の至宝」展を見る


2007年8月1日よりはじまった「トプカプ宮殿の至宝」展を見に行ってきました。オスマン帝国の財宝関係の展覧会は結構日本でもやって いて、2003年に「遙かなるイスタンブール 大トルコ展」、「トルコ三大文明展」でオスマン帝国の財宝はいくつか展示されていました。 今回もまたイスタンブールのトプカプ宮殿の展示ですので、どこかで見たことがある物が展示されているかもしれないなと思いつつ、 また見に行ってきました。

はじめに、スルタン関係の展示がありましたが、ここは肖像画とか文書、花押、あとは飾り関係の物が展示されていました。今回、 スルタンの肖像が展示されていましたが、どちらかというと斜陽の時期に属するスルタンたちの肖像画が多かったように思います。 表情のきつい(と言うか目つきが何となく怖い)アブデュル・ハミト1世の肖像画は見るとなかなか忘れられないんじゃないかと 思います。 その他、オスマン帝国の武具や馬印、旗印なども展示されていましたが、何となく昔同じような物を見たかもしれないと思ったのが、 オスマン帝国の儀礼用の銃(華やかな装飾がなされている)と兜ですね。

また、宮廷生活で用いられていた道具の展示もあり、コーヒーを飲むときの道具(トルココーヒーというのがあります)のほか、 ピラフ用の道具とかシャーベット用の道具何て物もありました。いずれの道具も宝石やら七宝、螺鈿などで飾られていて、宮廷用の 道具というのはそう言う物なのかと思いながら見てきました。また、服も展示されていましたが、まるで「ラピュタ」のドーラおばさん のズボン並みにぶっとい袴がありました。此はどんな感じで着ていたのか一寸気になります。

その後はハレムの女性のアクセサリーとか、宝石をふんだんに使った装身具、金でできた器などが多数展示されていました。この辺も 宮廷生活の一端を物語る物として良く来る展示物ですが、最後のほうに中国製陶磁器が多数展示されていました。ただし、唯の陶磁器 ではなく、オスマン帝国の法で使いやすいように細工をしたり、飾り立てるために宝石をはめ込んだりしているようなものです。青磁 の器に金属製の取っ手やフタがつけられ、おそらく中国側では全く考えてもいない用途に用いられているのがすごいですね。日本人の 美意識からすると、恐らく青磁の器にごてごて飾り付けるなんて事は考えもしないでしょうし、しなかったし、実際そう言うものは見た ことはありません。こういうところにも東と西で物の見方が違うんだと言うことがよく分かります。

金銀宝石で飾られた豪華な調度品や装身具、衣装に囲まれて暮らすスルタンやハレムの女性たちのことを幸せと思うかというとちょっと そうも言い切れないような気がしました。こういった物に囲まれながら、激しい権力闘争があったり、兄弟殺し(スルタン以外の男の子 を殺す慣習があったとか)があったりと、オスマン帝国の宮廷には他の国とはまた違う厳しさがあったわけで、そこでは平凡な日常を まったり過ごすなんて言う現代日本みたいなことはできなかったわけです。常にライバルを出し抜こうとし、追い落とされることを恐れ ながら暮らさねばならないだけに、生きているうちに贅の限りを尽くそうとでもしたのでしょうか。オスマン帝国の宮廷で磁器が重宝 された理由の一つに、毒入りの食べ物を見分けることができると信じられていたというものがありますが、常に他人に追い落とされる事 におびえ続けねばならない宮廷社会のゆがみみたいな物を感じてしまいました。とはいえ、そこで残された様々な品を眺めるのは結構 楽しかったりするのですが…。何となく複雑な気分です。


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