クロイソスの対ペルシア戦争


ヘロドトスの「歴史」はペルシア戦争に至までのギリシアとオリエント世界の歴史についての話が非常に多く載せられています。 そのなかには、アケメネス朝ペルシアがどのようにして発展していったのかが詳しく説明されていますが、一体どのようなことが かかれていたのかを、ちょっとだけですが書き出してみようと思います。それに関係するのが、リュディア王国国王クロイソスで、 彼はリュディア王国周辺地域を次々と攻めて力を拡大するとともに内政も充実させ、パトロクス川の砂金による利益、関税や朝貢に よる経済の繁栄や通貨制度の整備により知られた王様です。

一方、クロイソス統治下のリュディアの東方ではキュロスがアケメネス朝を建国し、その領土を拡大し始めました。そしてついに リュディアとアケメネス朝が激突するという事態に至るのです。


クロイソスの神託の意味取り違え(リュディアがペルシアを征服できると考えた)、カッパドキア領有の野心、メディア王で 義兄弟だったアステュアゲスの仇討ちといったことが理由に挙げられている。

・クロイソスはカッパドキアへ侵攻し、プテリアという地区へはいると、そこの田畑を荒らし回る。さらに都市を占領する。

・キュロスは進軍中に通過した土地の人々も引き連れて戦いに臨む。

・戦いの前にキュロスはイオニア人に使者を送り離反させようとするが失敗。あとでキュロスはイオニア人たちが従属を申し 出てきたときに笛吹と魚の寓話を持ち出して不快感を表明している。それに危機感を抱いたイオニア人たちはパンイオニオン に集結し、スパルタに使者を送り支援を求める事を可決した。なお、ミレトスはリュディアと同じ条件でキュロスと協定を結 んでいたため、特に危機感は感じなかったという。

・プテリア地区での戦闘は両者ともかなりの損害を出す。しかし数の不利を悟ったクロイソスはいったんサルディスへ戻り、 同盟を結んだエジプト、バビロニア、スパルタの軍勢と自軍を集めて春にペルシアへ攻め込むことを計画する。外人傭兵は解散。 ・一方キュロスはクロイソスが軍勢を集める前に出来るだけ早くサルディスへ攻め込むべきと考え、リュディア領内に侵入。 このころリュディアでは蛇が大量に出現し、それを馬が食べるという奇怪な現象が発生し、クロイソスはテルメッソスへ使者 を送り神託をうかがおうとした。なお、神託の結果が分かったときには既に手遅れだったが、蛇は大地を、馬は外部からの侵 略者を表すと言うことであった。

・クロイソス率いるリュディア軍とキュロス率いるペルシア軍はサルディス前の平野にて対峙。リュディア軍は強力な騎馬戦 力を持つ。彼らは乗馬に巧みであり、馬上で長大な槍を振るう。はたしてこれにアケメネス朝はどう立ち向かったのか。

・リュディア騎兵を前にしたキュロスはハルパゴス(岩明均「ヒストリエ」に出てくる人です)の献策に従い、駄獣としても ちいているラクダに騎兵の装備をした兵隊を乗せ、ラクダ隊を先頭 に立ててクロイソス軍にあたらせる。ラクダ隊の後ろに歩兵隊、その後ろに騎兵隊全部を配置。ラクダの姿や臭気を馬がいや がるという理由でリュディア騎兵隊の無力化を狙っての配置だった。なお、ラクダと同様の効果を持つ生き物に象がいる。

・戦いはアケメネス朝のねらい通り、リュディア騎兵隊の馬がラクダの臭気をかいで逃げ出した。しかし、それでもなお、 リュディア騎兵達は徒立ちでペルシア軍と戦い、奮戦したが、結局彼らは敗北した。

・敗北後、リュディア軍はサルディスに立てこもり、包囲戦が始まる。クロイソスは長引くと考え、同盟国に救援を要請した。 当時同盟国のスパルタはアルゴスと戦争中であったがなんとか救援に駆けつけようとした。しかし出発準備が整ったときにサルディ ス陥落の知らせが届き、出兵を断念。他の同盟国のことは不明である。

・そのサルディス陥落は包囲14日目にアクロポリスの断崖絶壁をマルドイ族のヒュロイアデスが登り、それに続いてペルシア 軍が侵入した。ヒュロイアデスは断崖絶壁をメディア人兵士がおりて落とした兜を拾っていく様子を見ていたためにそこから はいることを思いついた。これについても占いにまつわる話が残されている。テルメッソス人の占いでかつてサルディス王メ レスが獅子を引っ張って城壁を一周すればサルディスは難攻不落になるといわれたが、メレスは断崖絶壁の部分は回らなかっ たという。


サルディス陥落後、クロイソスは捕らえられて火刑に処せられることになりました。その後、火刑台で火あぶりになっているときに 神の加護によって助けられたという話がつたわっています。真偽のほどはさておき、この時助かったクロイソスはキュロス、カンビュセス 両王の相談役としてその名が伝えられています。

(参考文献)
ヘロドトス「歴史」(上)岩波書店(岩波文庫)、2007年(改版)
前田耕作「アジアの原象 歴史はヘロドトスとともに」日本放送出版協会(NHKブックス)、2003年

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