ミュシャ展をみた


チェコの画家アルフォンス・ミュシャ(チェコ語ではムハと読むようです)、太い輪郭線、草花をモチーフにした文様、曲線の多用、 色彩の美しさなどで特徴付けられる作品を多く残しています。ポスターなどの形で多くの作品が残され、今もなお多くの人を魅了する 独特の作品を目にすることができます。また、ミュシャの作品ににたデザインを用いる人は今も多くいるようです(東京駅100周年記念 SUICAのデザインはミュシャ風でした)。

今回、そんなミュシャが残した様々な作品がやってくるだけでなく、生涯のかなりの時間を費やした大作「スラヴ叙事詩」20点全てが 見られるという展覧会が開かれました。場所は六本木の国立新美術館、見に行ったのは会期終了間近という時期であり、長蛇の列が つくられていました。場内に入るだけでも大変な時間がかかるという状況でした。もう少し早く見に行くべきだったかなと。

今回の展覧会では、ミュシャの残した美麗なポスター、デザインした工芸品などが展示されていましたが、なんといってもやはり 「スラヴ叙事詩」につきるかと思います。スラヴ民族の始まりの歴史から、スラヴ民族にとり歴史上重要だった出来事の絵を描き、 そしてチェコ人たちにとって大きな出来事も扱うという20枚の大作絵画が一つにまとめられて展示されてました。ロシアの農奴解放 や、セルビア王ステファン=ドゥシャン、ブルガリア王シメオンのようなスラヴ世界で勢威をしめした王たち、そしてフス戦争に まつわる様々な場面などを描き出しています。

これらの絵が、ミュシャのポスターとはまた違う形式で描かれているように思いました。妙にくっきりとして、絵の中でも少し浮いている ようにみえる不思議な人物が描きこまれていたりするものがいくつか見られるようになりますが、これはどういう意図があってそのように 描いたのか、気になりましたが、なぜなのでしょう。

作品自体は、かなりナショナリズムに満ちた作品が多く、綺麗な絵を描くということよりも、スラヴ民族への訴えかけの方に重きがおかれ ているような感じのする絵も多く見られましたが、一方で独特な物悲しさを感じさせる作品がありました。スラヴ民族からすれば「栄光」 の歴史に分類されるかもしれないグルンバルドの戦いなどの絵も、勝利と栄光の瞬間というよりも戦いが済んだ後の悲しみなどのほうが 伝わってくるように感じました。


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