「ウルビーノのヴィーナス」展を見る


2008年3月4日より東京の国立西洋美術館で開催されている「ウルビーノのヴィーナス 古代からルネサンス、美の女神の系譜」という展覧会を 見てきました。以下はその感想です。

「ウルビーノのヴィーナス」展の構成ですが、まず古代ローマのウェヌス(ヴィーナスはこれの英語読み)と古代ギリシアのアフロディテ に関する美術が取り上げられていました。古代ギリシアの壺やローマの彫刻、カメオなどに表現された古代の女神やエロースを取り上げたあとは ルネサンスの頃になって再び描かれるようになったヴィーナス像を当時の写本に描かれた絵を紹介していきます。そして、徐々に古代風の裸体像 が描かれるようになったり、長持ちに描かれた絵画に用いるために横になったヴィーナス像が描かれ始めたことが示されていきます。

そして、今回の展覧会の目玉「ウルビーノのヴィーナス」が取り上げられ、その他の横たわるヴィーナス像各種が紹介されていきます。おなじ 題材であっても、犬が寝ていたり起きていたり、キューピッドが至りいなかったりといった違いがあるほか同じヴィーナスでも全然違う描かれ 方がされていることがよくわかります。ごつい体格でまるで男のようなヴィーナスもいればそうでないのもあったり、顔つきもかなり鼻筋が くっきりしていて昔の彫刻みたいな物もあればもっと柔らかい感じの物もあったり、画家によって同じ題材でも全く違う表現法をとっている ところがおもしろいですね。

そして、ヴィーナスとアドニス、パリスの審判といったヴィーナスが絡む題材が取り上げられたあと、ルネサンス以降のヴィーナスをあつかった 美術が色々と紹介されているという展示になっています。それにしてもアドニスといいパリスといい、ヴィーナスと関わった男2人に不幸がふり かかるところをみると、ヴィーナスは不幸を呼ぶ女としか言いようがないですね。ウルカヌスという夫がいながらマルスと不倫したりするところ もあまり感心しませんが、見た目はきれいだけれどもろくでもない女性という感じでいやですね。

古代から17世紀頃までの美術を取り上げ、ヴィーナス(アフロディテ)という題材を人々がどのように表現しようとしてきたのかをたどること ができ、なかなかおもしろい展覧会でした。目玉として取り上げられているのは「ウルビーノのヴィーナス」で、目玉となる絵が一つだけで あとは適当なんてことはなく、古代からかなり後の時代までの西洋美術が好きな人ならかなり楽しめると思います。イメージとしていつも裸 な人が出てくるイメージがあった古代の美術でも前4世紀まではアフロディテが着衣で描かれていたとは知らなかったな。


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