「イタリア・ルネサンスの版画」を見る


3月6日から5月6日まで、東京の国立西洋美術館にて「イタリア・ルネサンスの版画 ルネサンス美術を広めたニュー・メディア」展が 開催されています。ルネサンス美術というとレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」とかミケランジェロの「最後の審判」、ラファエロの 数々の作品と言ったものが有名だったりしますが、ルネサンスの時期は版画による表現が以前より発展していった時代でもありました。中世の 頃に既に木版は存在していましたが、お守りとかトランプの図柄に使われる程度でした。それがルネサンス期にはいると芸術家自身が手がけた 版画や、芸術家の監督下で作られた版画も登場し、版画の技法が美術品制作やルネサンス美術の伝播に大いに役立てられたと言われています。 この展覧会ではルネサンスの時代に残された多数の版画を紹介していますが、これはなかなか見応えがあります。

今回の版画をみていると、原画があって、それを元にして工房で制作された版画が結構ありました。版画は絵と違っていくつも作ることができ るため、ルネサンス美術が版画を通じて広まると言うこともあったようです。また、装飾の様式(グロテスク様式など)も版画を通じて国際的 に流布していったと言うことが言えるようですね。作品を見ていると、キリスト教にまつわる作品(東方三賢者とか、キリストの磔とか、そう いったものです)がかなり多く見られる他、古代の神話(ヘラクレスの偉業、アポロンとダフネなど)に題材を求めたものがありました。その 中で特に大きな作品として、ヴェネツィア島の俯瞰図がありました。非常に細かいところまで版画で表現したこの作品が一番大きな版画であり、 じっくり見ていても飽きることのない作品でした。

この展覧会で展示されているものは版画なので、そこで使われている色は黒しか無いこともあって、色彩的にはかなり地味な展覧会になって います。同時期にと美術館で開催されているオルセー美術館展と比べると派手さに欠けるとは思いますが、見飽きない展覧会であると思います。 また、展示作品にかなり近くにまで接近してみることが出来るので、色々と細かいところも見えるのがいいですね。また、展覧会というと図録 がどのくらい充実しているのかも大事な点だと思いますが、ローマにおける版画作成においてラファエロが結構重要な役割を果たしていたことや、 印刷産業や本の交易の中心地ヴェネツィアで版画(木版やエングレーヴィング)が盛んだったことなど、図録にイタリア・ルネサンスの頃の版画 事情が書いてあり、読むと役に立つと思います。また、白黒でも版画なので問題はなく見て楽しめるので、少々かさばる作りの図録ではあります が、買っても損はないと思います。


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