「マーオリ 神々の楽園」を見る


現在、上野の東京国立博物館にて「マーオリ 楽園の神々」展が開催されています。平成館の半分を使って開かれていて(もう 半分では「悠久の美 中国国家博物館名品展」を開催しています(2/25まで))、入場料は常設展と同じ料金で入れるという、 なかなかお得な展覧会です。

入り口に置かれた巨大なポウナム(軟玉)は手で触れることができます(他の展示品は触ってはいけません)。これにふれてニ ュージーランドと結びついてから展示を見ることになりますが、いくつか見ていて感じたことをまとめてみます。展示の順番に 書いた方がよいとは思いましたが、行ってから暫く経ってしまったためか順番は正確には覚えていませんので。

展示品には木製品が多かったのですが、非常に細かく文様が刻まれていました。入ってすぐの所に巨大なカヌーをもとにした彫刻 がおかれていましたが、細かい文様が刻まれているのはカヌーの船尾と舳先、宝箱といった木製品だけではありません。マーオリ というと独特の刺青を刻んでいますが、あれを彫るために鑿を使っていたようです。鑿といっても木工で使う物より遙かに細くて 細かい彫り物もできるようになっていますが、顔に鑿で彫るというのは今の刺青と比べてもかなり辛かったのではないかと思われ ます。また、入れ墨を彫ったマーオリのライブマスク(デスマスクじゃないですよ)がありましたが、顔を型取りして刺青の入っ たマスク作れるほどしっかり刻まれているとは思いませんでした。マーオリの刺青ですが、型どりして模様が残るくらいしっかり 彫るのだから、刺青を施してからしばらくは顔も腫れて大変なようで、食事を取るための漏斗が展示されていました。マーオリ社 会ではこういう苦痛に耐えてこそ一人前、と言うことだったのでしょう。

また、展示品のそこかしこに綺麗な飾りがあるなあと思ったところ、それは大体の場合貝殻を使っている物でした。貝殻を使った 工芸というと螺鈿細工がありますが、あそこまで細かく切ってくっつけるというわけではなく、結構大きな部品を作って付けてい たりします。全体的に色調としては黒・茶色が多い中ですからこれがなかなかよく目立ちます。マーオリの使っていた疑似餌や釣 り針にも貝殻の装飾が施された物がありましたが、海中できらきらと輝くこれらの仕掛けを小魚と勘違いして大きな魚が食らいつ くように工夫がされているのでしょう。その他、色鮮やかな物というと入り口にもあったポウナム(軟玉)が挙げられます。これ も手斧や棍棒、鑿等々に用いられていましたが、どちらかというと実用品というより儀礼用に作った物のようです(鑿は実際に使 っていそうな感じでしたが)。

その他マーオリの武器(木製の杖、石やクジラの骨の棍棒といった武器もありましたが、マーオリも鉄炮を使うようになったとか)、 集会所や倉庫の破風や羽目板と言ったかなり大きな物、マーオリの楽器やアクセサリー、祖先をまつるオブジェのような物もあり ましたが、最後の方ではマーオリのマントや織物が多数並べられていました(キウイの羽のマントというかなり変わった物もあり ました)。マーオリの人たちの道具を見ていると、石や木だけでなくクジラの骨を使った道具もありましたが、クジラの歯のアク セサリーというものやホオジロザメの歯を使ったネックレスもありました。隣でやっている中国の展覧会と比べるとやや地味な 感じはしますが、向こうが中国の名品をこれでもかとばかりに並べたフルコースみたいな物だとすると、此方の方はマーオリの 生活の中で使われてきた物が中心で、何となくほっとするものがあります。


トップへ戻る

inserted by FC2 system