日々の雑感(2006年10月〜12月)

通常の日々の雑感へ
12月31日
今年も残り後僅かになりました。結局今年のうちには「ヒストリエ」の新刊は出なかったなあ…。今月は掲載されているけれど来月はまた 休載だったりしますし。はたして物語序盤の状況に辿り着くのはいつの日になるのやら。

新年には深夜の地上波で「アレキサンダー」があります。事前の酷評があるからどれくらいの人が見るかどうか分かりませんが、自分の 目で見て判断してみてください。ただ、自分の目で見て判断すると言っても、概説書にちょこっと出てくるくらいのことしか知らないで 見た人が一番拒絶反応が強いような気がしないでもないし…。

大晦日、見る物は特にないので、何か一本サイトに記事でも掲載してみようかと思っていますが、果たしてうまくいきますか。

12月30日
久しぶりに高校サッカーを見てきました。意外とお客さんが来てました。結果は、やはり全日本ユース優勝チームは強かったということで。

その後映画を1本、シュバンクマイエルの新作「ルナシー」です。とはいえアニメーション部分はおまけみたいな物で、中心は普通の映画 でした。実際の俳優が演じるより、アニメーションの方がいいなあと。物語については、何となく途中からオチが読めてしまったというか 展開が多分こうなるんだろうなあと思ったような方向に行ってしまいました。それにしてもシュバンクマイエルの映画というのはねちゃっ とした音が耳につくなあ。

その後は地元の飲み屋で今年の締めということでビール3本。さすがに3日続けて飲んだので、正月は休刊日にあてようかどうか思案中。 でも久しぶりに友人と飲める機会が新年休みくらいしかないというのは辛いなあ。

12月29日
本日、「ダーウィンの悪夢」を鑑賞してきました。ビクトリア湖にナイルパーチが話されてから生態系が破壊されただけでなく タンザニアで色々な問題が起きているんだという方向に話を引っ張っていこうという感じのドキュメンタリー映画です。ただし、 これを見るとタンザニアはまるで地獄のような世界に思ってしまいますが、どうもそう言う方向に引っ張りたいがための場面 選択がなされているようで、正直なところあまりいい感じはしませんでした。武器の輸送の話のように伝聞と思わせぶりな描写で 語っているだけで、これがナイルパーチと本当にこれが結びつくのか疑問を感じる場面もかなりありました。なにより、エイズや 貧困、ストリートチルドレンの問題はナイルパーチを悪者にして解決できるような問題じゃないだろうに。始めから監督が語りたい 事があってそこにパズルのように色々な場面をはめ込んでいくと言うことに関しては、ドキュメンタリーって結局そう言う物だと おもうのでそれはまあ置いておきますが、これを見てタンザニアについて分かったつもりになったら大きな間違いだと思います。 まあ、グローバリゼーションに問題点があるんだろうなと言うことはこれから考えて行かなくてはいけない問題だと思うけれど、 これを見てグローバリゼーション批判とかそう言うのをやり始めるのはあまりいい感じはしないですね。

この映画ですが、これを見てグローバリゼーション批判を熱く語ってしまうのはあまりかっこよくないと思います。映画自体は、 川口探検隊を見て笑える人にはお薦めです(そう言う点から見ると面白いですよ)。

12月26日
今日は映画を1本。「あるいは裏切りという名の犬」というフランス映画です。2人の対照的なパリ警視庁の警視が繰り広げる渋い フィルムノワールです。レオは自分の仲間や情報屋、昔関わった事のある人々から慕われ、自身もそう言う人々を守っていくかなり 義理人情に厚いタイプ、ドニはとにかく権力志向が強く、仕事で業績を上げることだけ考えているタイプです。彼らは単純な正義と 悪で割り切れるような存在ではなく、部下から慕われるレオも捜査方法はかなりダーティーなところがあったりしますし、仲間や親 しき者が傷つけられたときは容赦なく制裁を加えます。一方のドニはとにかく出世のためには手段を選ばず、部下に口裏をあわせさ せたり裏で手を回したりといったことはざらです。そして心ある部下は彼の許を離れていってしまいます。こんなレオとドニは年功 ・階級・成績とも互角ですが、人間的にはかなり違っており、かつては一人の女性をとりあったこともありました(で、その人はレ オの奥さんになってます)。

物語は対照的なキャラクターの2人が現金輸送車連続強盗事件解決のために一緒に仕事をする、しかもレオが指揮を執りドニは指揮下 に入るという条件での参加ということから色々と大変なことが起きてきます。上司からの信頼に応えたいレオはいけないと分かって いつつも情報屋のアリバイ作りに加担し、それにより強盗団逮捕に成功します。しかしその過程でドニの独断専行により部下を死なせ てしまい、さらに情報屋がやらかした殺人事件のアリバイ作りに加担してしまったことをドニに利用されて逮捕されてしまいます。 一方のドニは独断専行の件で告発されてしましたがこれで一気に立場を逆転させ、最終的に彼はパリ警視庁長官の地位につくことに成功 します。さらにレオの妻でかつてレオとドニが取り合ったカミーユも死んでしまうなど、レオの置かれている状況はますます悲惨な事 になっていきます。しかし両者の対照的な性格が因果応報とでも言えばいいのでしょうか、そんな結末をもたらします。結末は見ての お楽しみですが、色々絡まりあった話がここできちんとまとまっていきます。とにかく渋い映画ですが、非常に面白いですよ。

12月25日
夜中に自サイトのリンク集充実なんて作業をやってしまいました。これでいいのか?いや、いいのだ。連絡不要なところはそのまま、 あとは事後連絡でいいかなと思われるので後で連絡します。今回加えたのは古代以外の歴史を多く扱っているところ、西洋古代史以外 を中心に扱っているところです。そう言うところも面白そうだと思ったらどんどん加えてみようかと思ってリンクを張ってみました。 突然世界政策っぽいことを展開していますが、何かおもしろそうな物があったらこれからもどんどんリンクを増やす予定です。読書や 映画関係のサイトで面白そうなのがあったらこれから増やそうかなと思っていますが、この辺になるとブログを探した方が早いかなと 言う気がします。

12月24日
そろそろ今年1年を振り返ると言うことで様々なジャンルで今年1年間の総括のようなことをやったり、今年のお薦めをとりあげる ようなコーナーができています。新聞の書評欄でもそう言うことが行われていますが、朝日新聞の書評面では書評を書いた人たちの お薦め3冊が掲載されていました。人によって色々な本が取り上げられている中で山下範久先生の所では「シェイクスピアの驚異の 成功物語」と「民族と帝国」が掲載されていました。書評欄を見ていて、自分が読んだことのある本が掲載されていると言うことで なぜか嬉しいと思う一方で、自分の読書の幅の狭さを痛感させられました。他の書評委員の紹介している本でまともに読んだ物がな いというのはちょっとまずいかなとおもいます。しかし書評委員の紹介する本をみていると、社会科学系・文芸書の多さに比べて人 文科学系の堅めな本は少ない印象をうけました。それ以上に自然科学系の本を紹介する人があまりにも少ないのは問題があると思い ます。もう少し書評委員の構成を考えた方がよいのではないかと思いました。

それにしても、売れている本をみていると、これは数年後には忘れ去られているのではないかと思う本だったり、あるいはトンデモ 本としていじりの対象になっているのではないかと思われる本がずらっと並んでますね。別に専門書や学術書がミリオンセラーに なれとはいわないけれど、浅薄な新書ばかりが売れるというのはどうなんだろう。これに関しては読み手だけじゃなくて売り手の ほうの問題もあるのではないか、もっと仕掛けてみてもいいんじゃないかと。例えば岩明均「ヒストリエ」があるのだからそこに絡め てギリシア史の読み物を書いて売りさばくとか、惣領冬実「チェーザレ」に絡めてイタリア史の本を出すとか、幸村誠「ヴィンランド・ サガ」にあわせてノルマン人の本を作るとか…。挙げられたものが漫画ばかり・講談社ばかりではありますが、とっかかりとしては 使えると思います。便乗と言われようが何と言われようが、こういう機会を活かして本を作り、売っていけばいいのに。

それとは全く関係ない話ですが、「漫画ゴラク」にて平松伸二が集中連載を載せています。平松版民明書房には苦笑というか失笑と いうか…。

12月23日
昨日と今日で映画を2本見てきました。一本は「オーロラ」、もう一本は「パプリカ」です。
面白かったのはどちらかと言われたら「パプリカ」のほうが面白かったです。夢と現実がごっちゃになり、いつの間にか虚構がリアルを 浸食していく様子は実写だと難しいだろうなあと思います。これはアニメにして正解だったのではないかとおもわれます。これは一度は 見てみた方がいいんじゃないかなあ。

「オーロラ」のほうは、話はもうちょっと何とかならないのかなあという気がしてしまいました。ダンスのシーンそのものは見応えがある ので、それは見所ですが。しかし、ジパンゴ国の踊りはなぜ暗黒舞踏チックなのでしょうか・・・・。

12月16日
久しぶりに映画鑑賞をしてきました。とは言っても、今週公開された作品ではなく、かなり前に公開されてからまだ見ていなかった 「プラダを着た悪魔」ですが。そもそもそこで働く動機自体が問題なんじゃないかという気がしてしまう主人公や、どこからどう見ても だめんずにしか見えないその彼氏には全く共感できませんでしたが、映画自体は面白かったですよ。メリル・ストリープ扮する編集長 は悪魔、と言うより魔女って感じがしますが、あの働きっぷりは尋常じゃないな。あと、「世界は自分のためにある」とでもおもって いるようなところから発生する無茶苦茶な要求の数々も(「ハリー・ポッター」第7巻のゲラ持って来いって・・)。

12月10日
急激に冷えてきたような気がしますが、いかがお過ごしでしょうか。

最近読んでいる本で面白いなあと思うものを挙げると、「シェイクスピアの驚異の成功物語」(白水社)は挙げておきたいところです。 総ページ数が600近い大部の本ではありますが、読み始めるとこれがなかなか面白く読めます。シェイクスピアの生きた時代の色々な記録 文書や彼の劇から、シェイクスピアの生涯について著者の想像を交えつつ迫っていく本です。但し、著者の想像と言っても何の根拠もなく そのようなことを言っているのではなく、色々な証拠を積み上げながら最も妥当だと思われる推論を重ねて書き上げているので読んでいて すっと納得してしまいます(そこはちょっと怖いのですが)。

想像力を駆使してものを書くと言っても、その想像力は論理的思考のないところには絶対に出てこないのではないかと思われます。英語で 想像するという意味の単語というとimagineとfancyがまずでてくると思いますが、fancyというとどちらかというと空想・妄想の類や思い つきといった意味があります。しかしimagineのほうは推測したり仮定したりと言った意味を持っており、この本の想像力というのは恐らく imaginationの方ではないかと思われます。日本だとどちらも「想像する」となりますし、それを名詞形にすると「想像力」になってしまい ますが、単なる思いつきと多くの証拠をきちんと検討して推論して出来た物は全く違います。どうも日本ではこの辺の所の区別が意図的なの か、無意識なのかは分かりませんが、曖昧になっているというかんじがしてしまう今日この頃、自分もサイトを作る上でそう言ったところ には気を付けていきたいです。

12月4日
「キングダム・オブ・ヘブン」ディレクターズカット版をようやく見ました。海外版に付いている特典DVDが付いていないと言うことで 色々批判もありますが、とりあえず本編が見られるようになっただけでもよしとしましょう。

これを見ると、公開されたバージョンでは分からなかったことが色々と分かりますし、キャラクターの設定や性格についてもわかり にくかったことが分かってきます。また、かなり重要なシーンをごっそりとカットしてしまっていたと言うことも分かりますし、 これを入れた方が映画が分かりやすくなると言う場面も結構ありました。いや、こっちを見てから評価しろと言うのでしたら、かなり 高い評価をしてもいいかなと思います。前は結構きついコメントを書いたような気もしますが、此方は確かに面白いです。バリアンが ゴドフリーの庶子だと言うこと、冒頭の神父が実はバリアンの弟だったり、バリアンは従軍経験があり、攻城兵器についても分かって いる人物だと言うことがわかっただけでもだいぶすっきりしました。また、ボードワン5世に関する重大なシーンも付け加えられてい ます。ボードワン5世関係の話は公開時にはごっそりとカットされていましたが、何故あの辺りの話を悉くカットしてしまったのか、 謎ですね。公開時に色々言われたバリアンの選択に関してもボードワン4世との対話の場面で伏線が貼られていたことも分かりましたし (とはいえ、やはりあの選択はまずかったとおもうけれど)、またエンディングに近いところでも追加されたシーン(釈放されたギー・ ド・リュジニャンとバリアンの決闘シーン)があります。

それにしても睾丸に矢をうけて2日間戦ったって・・・・ゴドフリーさん、あんた化け物か?

11月30日
歴史記事の更新がすっかり止まってしまっています。ちょっとまとめて更新する余裕もなく気がついたら1ヶ月以上間が開いて しまいました。更新するとしたら年末年始の時期になりそうです。その辺りしか時間もとれないでしょうから仕方がありません。 するとしたらマケドニア史の所を集中的に更新しようかと思っていますが、他の所はどうなるかなあ。「ヒストリエ」関係も少し 位は更新したいのですがネタがねえ・・・。アルゴ号とかイフィクラテスってなんか微妙だし。単純にそう言うことを載せるので はなくて、何か一ひねりしたいのですが・・・。

読書の方はというと、中世関係の本を数冊読んでいます。一方で「興亡の世界史」は買ってみたのですが、なんだか読んでいて しっくり来ないというかぐいぐい引き込まれるという感じではないですね。ま、分かりやすくは書かれていると思うので読んで 損はないと思いますが。アメリカの方は買ってみた物の今読む気分ではないため放置しています。イスラムの方から読んでいます が、ムハンマド時代の記述にかなりのページを割いている一方で他の歴史が薄いという感じがします(アッバース朝以後がものすごい 駆け足で話が進んでいます)。一方でジハード(内面の悪との戦い・社会的公正の樹立・外敵との戦いの3つのカテゴリーがある) を切り口にして誕生から現代に至るイスラムの歴史を考えるというのはなかなか面白い切り口だなあと思います。現代はジハードを 指揮するイスラム世界全体の指導者という物が存在せず、各自が勝手にジハードと称していろいろやっている(ビンラディンとか) 状態ですが、果たして今後はどうなるのか。評価の定まらぬ時代のことを色々扱っているため終わりの2章についてはいろいろと 言われそうな気もしますが、「知識より知恵」というのが本シリーズのスタンスであることを考えるとこういう方向に持っていくと 言うのはありでしょう。とりあえず、一括紹介コーナーとして作ってみました。

11月26日
ものを食べたり飲んだりするときあれこれ理屈をこねながら食べるより、味覚と嗅覚の方に神経を集中して味わって食べたい と思う今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか(理屈こねるのは食い終わってからで十分。こねたい人はよそでどうぞ)。

それはさておき、うちのサイトのどこかにロシア料理店のリストと中東系料理店のリスト(どちらも実際に行った店のみ掲載) がありますが、あれに載せてある店の中には今はもう閉店してしまっているところもあります。六本木にあったロシア料理店 「ロスカヤ・トロイカ」や渋谷の「サモワール」(いつか再開するという話を聞いたのですが、まだみたいです)はまた何度も 行ってみたい店でしたが、今となってはそれは叶わぬ夢となってしまいました。

一人でロシア料理、一人で中東系料理、こういったことをやっていて今のところ独り者を拒絶するような店にはあたったことは ありません。でも独り者を排除するようなお店も世の中にはあるようで・・・・。ま、そんな店はどうでも良いのですが。

11月21日
東京フィルメックスで見た作品についてでも。

「りんご、もうひとつある?」(2006、イラン)
いつの時代、どこの国なのかよく分からない世界で、老人と子供が首だけ地上に出して埋められている場面から始まります。そこから 場面が切り替わり、一人の男が馬に乗った母親にムチでひっぱたかれたかと思うと、次の場面ではいきなり銃撃されるという変な展開 になり、その後はカマを持つ人々(capable and cunningな人々だとか。単純な悪党ではないと言うことは支配下に置いている場所により 色々対応が変わったり、終盤での主人公に対する対応からも示されます)に追いかけられ、それから逃げるという話が延々と続きます。 道中で謎の美女に出会って彼女と一緒に村々を転々とするのですが、ある村ではカマを持つ人々から逃れるために寝たふりをし、また 別の村では物乞いや惨めな境遇を強調したりしています。そして、またある村では一席演説をぶったことが原因で勇者のような扱いを うけ、素朴な装備でカマを持つ人々に立ち向かいますがあえなく村は制圧され、村から逃げた老人と危険を避けるために逃がされた子供 以外は皆死んでしまったようです。男はそこからも逃げ、途中で子供たちを連れて非難している女と合流、さらにある村で老人たちとも 合流するのですが、そこでまたしてもカマを持つ人にでくわし、老人と子供、謎の美女は連れて行かれてしまいます。そのときカマを持つ 人のリーダーらしき人が日没までに彼らのいる場所に来たら解放するといい、実際に日没までに間に合うと男にその村を任せるという方向 に話が進んでいきます。全体として話の繋がりが普通ではないような繋がり方をしていて、突然話が変わるため、一体何がどうなっている のかわかりにくいところもあります。とはいえ、かなり不思議な世界観を笑って楽しむのがいいのではないかと思われます。上映終了後の 質疑応答で、監督も今までにない話を作ろうと思ったとき、自分の見た夢をつなぎ合わせてみようとおもったというような事を言っていた 記憶があります(とにかく夢のことは言っていました。こういうことかどうかはさておき)。夢って唐突に場面が展開したり、脈絡もなく 色々な物が出てきたりするので、そういうところでは「夢」というのはこの映画にあってるような気がします。

11月19日
ここのところ、ちょっと色々と買い物をしています。本は「興亡の世界史」、「十字軍大全」、「ジョン・ホークウッド」を購入。 DVDは「ビハインド・ザ・サン」が廉価版になっていたので購入。そのほか「僕の村は戦場だった」を今更ながら購入。

「僕の村は戦場だった」は一人の少年の生と死を現実の場面と回想シーン・夢の部分のコントラストで描いていく作品です。回想シーン のイワンと現実の場面のイワンの表情が大きく変わってしまっているところをみると、戦争の悲惨さについて考えさせられる映画ですね。 とにかくあおって無理矢理にでも泣かせようとする感動系映画を見てる暇があったらこれを見ろ、といいたい。

「ビハインド・ザ・サン」は長年に渡り土地を巡るあらそいを続ける2つの家があり、果てしない抗争を繰り返しています。主人公も その運命からは逃れられず、相手の家の家長を殺害し、今度は自分が復讐される側になっています。そんなあらそいが繰り返される 土地にサーカス団がやってきたことが主人公を変えていくことになるのですが・・・。復讐の連鎖・因習にとらわれた世界から抜ける事 はできるのか。主人公の家でサトウキビを挽きつぶす作業が良く出てきますが、くびきを外されているのに勝手に回り続ける牛の姿を みると、縛られた世界から抜けることは容易ではない、特に他の世界を知らない場合にはまず抜けられないのだろうと思います。主人公 はサーカス団との出会いで自分の暮らす世界と違う物がある、と言うことを知りますが牛の場合はそうはいかないからなぁ・・。

一つの世界や物事にとらわれずに生きるには何が必要なのだろうと時々思うことがありますが、まず自分が暮らす世界意外にも色々な 世界があると知ること、そして実際に自分が暮らす世界で得られる体験と違うことをしてみるかさせてみることが必要かと思われます。 一つ目の条件は本・映画など色々な方法で可能ですが、もう一つが厄介なところです。多くの場合、人は自分の知る世界からなかなか 出ようとしない傾向があるように思われます。世の中色々な映画が上映され、色々な本が売られていますがたいていの場合は自分の興味 のあるジャンルの物しか手に取らないでしょう(実際の所、私だって本屋に行くと人文系のコーナーまっしぐらだったりしますが・・)。 本人の好きにさせるとなると結局の所何もしないと言うこともあり(変えない方が楽ですから)、あえて他のことを知らしめるために 強制という手段(無理矢理にでも普段していることと違うことをさせる)をとらざるを得ないこともあるのではなかろうかと思う事が あります。

11月18日
久しぶりに映画館で映画を見てきました。見てきた作品は今年のカンヌ映画祭パルムドール作品「麦の穂を揺らす風」(ケン・ローチ 監督作品)です。扱っている題材は1920年代のアイルランドで、イギリスからの独立を目指してたたかい、アイルランド自由国ができ るものの、今度はアイルランド内部で内戦状態になるという展開を辿ります。主人公デミアンはロンドンへ行って医者として働こうと しますが、駅でのイギリス軍による汽車の運転手たちへのひどい暴行を見た後アイルランドにとどまり、兄テディとともに独立のため に戦うことを選びます。ある時には捕らえられて厳しい拷問をうけ、またあるときは同じアイルランド人の中で裏切る物が出てきたり、 仲間が傷ついて死んでいったりする中でついにアイルランドは独立を勝ち取ります。しかしそれはアイルランド自由国というイギリスの 自治領としての独立であり、完全な自由や独立を求める側にたったデミアンと自由国の軍人となったテディは訣別し、アイルランド人 同士が血を流し合う内戦で兄弟は引き裂かれることになります。そしてついに捕らえられたデミアンのもとをテディが訪ね、平穏無事 な生活を送るようにいうのですが、デミアンは結局死ぬことを選ぶのです。

タイトルが何となくさわやかなイメージを与えていますが映画の中ではイギリス軍や武装警察「ブラックアンドタンズ」の暴虐ぶりが これでもかと描かれています。テディに対する生爪はがし、デミアンの恋人に対する頭に傷を負わせるほどのひどい髪切り、アイルラ ンド人に対する暴行といった暴力的な描写は見ているこちらも痛くなってきます。老若男女とわず行われる暴力は銃撃戦よりも見ていて 辛いですね。確かにこういうシーンを見るとイギリスのメディアで「反英国的映画」と言ったところもあるのが分かる気がします。 「誰と戦っているのかは簡単にわかるが、何のために戦っているのか考えなくてはいけない」(だったかな?)という劇中の言葉が重いです。

11月12日
たまたま「メル・ブルックスの珍説世界史Part1」というDVDを発見して購入しました。石器時代からフランス革命までの世界史を ネタにしたギャグ映画ですが、ミュージカル仕立てのスペイン異端審問が特におかしかったです。全体的に荒唐無稽というかはちゃ めちゃな映画ですが、こういうのもいいもんです。でも、これを見せても世界史を履修したことにはならないだろうなあ。

11月5日
随分と冷え込んできましたが、いかがお過ごしでしょうか。
掲示板の方で、Sikanderと言う映画のことが話題に出ていますが、これにかぎらずDVDにしてほしいと思う作品はいろいろあります。 昔地元のビデオ屋で借りようと思ったらいつの間にか消えた「マンドハイ」とか、もう一辺見なおしてみたい「ジョヴァンニ」あたり をなんとかしてDVD化してほしいのですが、難しいのかな。「たのみこむ」に投稿するという手もありますが、アレに投稿したところ ではたしてどれだけ賛同を得られるか分かりませんし・・・。まあ、でもあそこの頼み込みで賛同者の多かった「ラビリンス」が出た ということもありますし、案外アレも見ている人はいるのでしょう。

いっぽうで、「復刊ドットコム」が最近運営方針が変わってしまい、本当にこれを復刊してほしい人がそんなにいたのかと思うような ゲームやアニメ関係の本ばかりが復刊されているような気がして仕方がありません。まあ慈善事業じゃないからしょうがないというか、 所詮そんな程度だったと言うことか、まあいいですけど。

11月3日
さすがに家に置いてある本が多くなりすぎたため、一部の本を売りに古本屋に行ってきました。しかし冊数が多かったので神保町では なく地元の古本屋にしましたが、もうちょっと高くなるかなと思ったけれど駄目でしたね。今回持っていった本は元々よその古本屋で 買った物だったり一冊当たりの単価が高くない本が多かったのですが、専門書を売るときは神保町に持っていった方が良さそうですね。 まだまだ片づけたい本もありますが一方でこれは売っちゃまずいだろうという本もあるため、その辺りの見極めをどうするか、それが 問題です。

11月1日
1週間くらい間が開いてますが、その間に「ひとり&ふたり芝居」を鑑賞してきました。新宿2丁目にある小さい劇場にてやって いたのですが、2人芝居のほうは話の構成やテンポなどがうまく、一人芝居は三国志でこんな風に話が作れるのかと聞いていて関心、 パントマイムは見ていて面白かったです(お客さんも巻き込まれてました)。

10月25日
久しぶりに「アフタヌーン」にヒストリエが掲載されていましたが、なるほど、ああいう形でケリを付けたというわけですか。 読んだ感想は、やっとここまできたのかという思いが強いですが、そろそろ話が動き出しそうな気がします。でも来月号はまた 休載みたいですが・・・。そろそろ単行本1巻分くらいにはなるのでしょうか。

10月20日
今日でサイト開設3周年を迎えました。とりあえず4年目も無事に過ごせるように。
ちかいうちに何か記事をアップできると良いなあと思っています。

10月19日
鉄炮展の感想はもう暫くお待ち下さい。情報を整理しながら書こうとすると結構大変ですね。
(追記:ようやく書き終えました

10月17日
本日、佐倉の歴史民俗博物館にて「歴史の中の鉄炮伝来」という企画展を鑑賞。詳しい感想は後ほど載せますが、色々なタイプの鉄炮 があるだけでなく、弾丸の方もいろいろあり、さらには炮術についても色々な流儀があると言うことがよく分かりました。
感想はこちらに

10月16日
本日、「カポーティ」を鑑賞してきました。しかし中盤の辺りで意識が飛んでいたため、映画の感想としてはかなり断片的なことしか語れ ません。「冷血」を書き上げるまでのカポーティの姿を描き出した作品です、とだけ書いておきます。

見ていて思ったのは、取材者と取材対象の距離の取り方は気を付けないと大変なことになると言うことですね。今でも取材対象と取材者の 距離の取り方というのは色々問題にもなっていますし、サッカー関係の書き物を見ていると時々その辺のところが心配になる記事やコラム を見かけます。取材対象に肉薄することは勿論必要だと思いますが、近づきすぎて取り込まれているような所も感じられます。「カポーティ」 では当初カポーティは自分の小説のネタを集めることだけを考え、死刑囚ペリー・スミスに接近して彼に弁護士も付けて控訴させて裁判を 長引かせたりしていますが、スミスと話すうちにかれのなかに「もうひとりの自分」のような一面を見てしまい、それから作品を完成させ なくてはならないという思いと彼を死なせたくないという思いの板挟みになってしまい、結局そのことが彼の創作能力を著しく減退させる 事になってしまうことになります(実際に、「冷血」発表後のカポーティは作品を完成させることができなくなり、未完状態の作品ばかり です)。

10月15日
最近見に行きたいと思っている展覧会に佐倉の歴博(歴史民俗博物館)にて開かれている「歴史のなかの鉄炮伝来-種子島から戊辰戦争まで」 という展覧会があります。日本に鉄砲が伝わり、それが広まっていき、そして新しい物に取って代わられる過程を豊富な資料を用いて示して いるような展覧会ですが、展覧会の構成や展覧会案内の文章を読んでいると、「真説・鉄砲伝来」の著者宇田川武久先生の研究の集大成と 言っても良い展覧会ではないかと思われます。歴史の研究をしている人にとって、自説を主張する書き物を書くというのは当然のことですが、 こうやって自分の研究をもとにした展覧会を開催できる人というのはごく僅かなのではないかと思われます。3年前のアレクサンドロス大王 展もそのような性格が強い展覧会でしたが(後半で仏教美術・仏教の神々とギリシアの繋がりのことが話に取り上げられています)、それと 比べると佐倉の歴博の展覧会の方が何となくすっきりと見られそうな気がします。問題は、佐倉に行くまでが大変なことと、佐倉についてか らあとも大変そうだと言うことですが・・・。

10月13日
とりあえず長屋の隠居みたいな、大所高所からの意見を気取ったような、もったいぶったような説教臭いような、そんなコメントは書かぬ ように気をつけたいものです。掲示板で説教オヤジみたいなことをしてても格好悪いだけですし。

「働きマン」第1話をみる。とりあえず次回も見る予定。不覚にも第2話を見逃した「デスノート」とこれくらいは見ようかと思います。

どうやら本当にトランスフォーマーが実写になるようです。人間と声優に大物を使わない分VFXにかなり力を入れているらしいのですが、 はたしてどうなる?とりあえず監督がマイケル・ベイ(「バッドボーイズ」「アイランド」)なので派手なドンパチものの映画になりそう ですが、動くトランスフォーマーというのは見てみたいものです。来年夏の公開が予定されていますので、それまでまとう。

10月9日
ここのところ歴史のコーナーの更新がすっかり止まっていますが、何もしていないわけではありません。ただ単に執筆途中で放置している といいますか忙しくてなかなかかけないという状況にあるため書いていないだけです。とりあえずどんなことに手を出しているのかという 事については紹介しておこうと思います
    「エウメネスと『ヒストリエ』の世界」
    (予定)となっているアルゴ号とイフィクラテスのどちらかはそろそろ完成させたい
    逆引き人物伝
    「ス」で終わる人物について執筆中。イラン系の人を扱ってます。それにしても、ギリシア・ローマ系の人ではない所から探すと結構大変 です。
    雑多な事柄
    色々な自体に手を出してみた物の、何かはっきりしない状態です。突然イベリア半島について手を出した後でイスラムに変えてみたり・・。 ここが一番厄介かも
    続・古代マケドニア王国史
    他のコーナーよりもむしろここを仕上げるのが先なような気がします。とりあえず第2次マケドニア戦争まではまず作っておきたい。 その後も勿論作りますが、一寸ここはゆっくり作っていこうかと思っています(あまり早く完成させると次にやることが無くなるので)。
とりあえずこんな具合です。マケドニアとかアレクサンドロスとかをメインに始めたページですが、段々色々なところに広がりつつあります。 果たして数年後にはどうなっている事やら。そう言えばもうすぐサイト開設から3周年。むかしよく「ウェブサイト3年寿命説」なんてこと を言っていた記憶がありますが、その3年を迎えた後も何とかやっていければいいなあと思っています。家にタネ本は各種取りそろえている のでネタには困らないはずなんですが、横文字を読むのが最近しんどくなってきたからなぁ・・・。かといって読まないとサイト作れないし。 はぁ・・・。

本日、外出して本を数冊入手しました。その中には周藤芳幸「古代ギリシア 地中海への展開」(京大学術出版会)もあります。それに しても選書で400ページを超えるボリュームというのは一寸すごすぎます。しかも他の選書と比べて行間も詰まっているし字も少々小さい 感じがするので、これを読み切るにはかなり時間がかかりそうです。実際に手に取ってみるとずしりと重さを感じさせる本というのは案外 珍しいかも。

10月5日
もうすぐサイト開設から3周年になります。それでと言うわけではありませんが掲示板を変えてみました。ここのところアダルトサイトの 広告の投稿が相次いでいたのもありますし、何となく使い勝手も良いような悪いようなよく分からないところがあったので、これを機会に 掲示板を新しい物に変えてみました。今度は有料版にしたので広告がついていませんし、わざわざ過去ログをとらなくても前の数倍の記事 を残せるということになっています。

10月1日
久しぶりに家でのんびり休めます。「エルミタージュ幻想」をまた見なおしていますが、ロシアの歴史・芸術に浸るための作品として 鑑賞するか、エルミタージュの中をぐるぐる回りつつ、この建物が経験してきた歴史の一場面をつなぎ合わせロシアの歴史を集約させ た映像と、その中でフランス人外交官とカメラの視点の主の言葉のやりとり(これがまあなかなか鋭いんです)を聞きながら、じっくり と思考しながらみるのが良いと思われます。何か忙しく、気ぜわしいときに見ても何だか分からないでしょう。また、やたらと感動を 求めたがる人には絶対に理解できない作品だとも思います。

映画はピョートル大帝の時代から始まり、最後は「さらば、ヨーロッパよ」という台詞でおわっています。映画の冒頭の辺りでロシアは アジアだとフランス人外交官が喝破しています(アレクサンドロス大王やピョートル大帝のような暴君がいるという理由付けがなされます)。 このフランス人外交官というのが実にスノッブな奴で、グリンカの曲を聴いても音楽家と言えばドイツ人に決まっていると頑固に主張し、 ラファエロをもした様式を見てラファエロはロシアには向かないと言い出し、フランスの物であっても第一帝政様式は愚かな様式であると 言い放ち、セーブル焼きの器が気に入っているようで、祝宴を準備する係が制止しても聞かずにじっと観察を続けています。また、 ロシアはヨーロッパの模倣を何故するのかと言った後に「ロシアの権力者は自分たちの芸術家の考える力を信用していないらしい。 まぁ自分で考えない人間の方が専制君主には好都合なわけだが」等と言ってしまいます。そして、仏語訳で読んだことがあるというプーシ キンについても大したことがないと言ってのけます。また彼はかなり信仰心に篤い人物であり、現代のエルミタージュ美術館の展示室に迷 い込んでキリスト教をモチーフにした美術と異教的な美術が同じ「美術」として一緒くたに扱われている現状を嘆き、聖ペテロと聖パウロの 肖像を見ている若者を「聖書も読んだことがなくてこの絵や人間の未来についてなにが分かるというのか?」と罵倒しています。

確かに、ロシアの歴史、特にロマノフ朝の歴史を見ていくとロシアがヨーロッパを模倣し、西欧化を進めようとしていた様子が見て取れます。 映画の冒頭に登場するピョートル大帝というとロシアの西欧化を進めようとした人物として知られており、自ら西欧へ行って造船技術を学ん だり、ロシアに帰ってきて大貴族たちに長い髭を蓄えることを禁じようとしたエピソードが残されています。そして、ピョートル以後のロシア の歩みをみても啓蒙専制君主として名高くヴォルテールと交流があったエカテリーナ2世はもちろん、ロマノフ朝では近代には西欧風の宮廷 文化が発展し貴族の間ではフランス語が使われていました。また、19世紀に興った社会主義思想もロシアに取り込まれ、革命の後にソ連が建国 されました。このようにロシアがヨーロッパから色々な物を取り込み模倣してきたと言うことは歴史的にも明らかなことです。しかし外交官 が依って立つフランスやイタリアの文化もまた過去の様々な遺産を取り込み模倣しながら作られてきた物だと言うことを忘れてはいけません。

そして、舞踏会の後、外交官は残り、カメラの主は「前へ」進むことを選択し、そしてヨーロッパに別れを告げる言葉を残して映画は終わり にむかいます。あとは舞踏会を終えた客の帰宅シーンが延々と続き、幻想的な海の場面で締めくくられますが、原題は「ロシアの方舟」という 意味なので、それをふまえた上での終わり方ではないかと思われます。ソ連が崩壊した今、「私たちの運命とは永遠に生き、この海を永遠に 航海することなのだ」とカメラの主は最後に語りますが、ピョートル大帝以後のロシアの歴史を詰め込んだ「ロシアの方舟」エルミタージュ とともにロシアがどのような航路をとることになるのでしょうか。19世紀ロシアには「スラヴ派」と「西欧派」という2つの流れが思想界に 存在したり、現在に至るロシアの歩みを見ていても一時期は丸ごと欧米式の経済政策を導入しようとして大失敗したりと、隣接する「ヨーロッパ (特に西欧)」とどのように関わっていくのかはこれから先も考えて行かなくてはならない問題でありつづけるのでしょう。ヨーロッパに別れ を告げつつ永遠に航海するということは、そういう事なのではないかと思われます。そして同じ問題は日本にもあるんじゃないかと思われます。

そういえば、最後の舞踏会のシーン(なかなか見応えあり)は冒頭のシーンとつながっているのでしょうか。なんとなくですが、同じ人 たちがいるような気がするのですが。

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